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地元の木を、地元で熟成させる豊かさ。天然乾燥材の魅力に触れて。

2025.12.02

先日、永田木材さんのセミナーに参加した。

神奈川からのお客さまも参加し、楽しく学べる会でした。

永田社長ありがとうございました。

暮らしをつくろう。大切な人との時間を豊かに。

4代目の新野恵一(にいのけいいち)です。

(*タグで絞り込み→「4代目」を選択すれば、ブログがのぞけます。)

引佐で天然乾燥にこだわる「永田木材

永田木材さんは、引佐で天然乾燥を大切にして木を育てる製材所さん。
teN°Pという素敵なブランドも展開しています。ご興味ある方は、是非ご覧ください。)


今までお取引はありませんでしたが、DMが届き、その内容にビビッときて参加を決めました。

今回のテーマは 「天然乾燥材の魅力」。

*天竜材に囲まれた素敵な会場です。


いりまさで、設計施工させていただいた、まるたま製茶さんとのコラボイベントで、休憩には美味しいデザートもつき、学びと交流が心地よく混ざる豊かな時間でした。

木材の乾燥方法は2種類ある

木は伐採したばかりだと水分が多く、そのままでは建築に使えません。

木材が水を多く含んだままだと…

  • 乾いて縮む → 家がゆがむ
  • カビ・腐れが起きる
  • シロアリが寄ってくる
  • 加工性が悪い
  • 接合部の性能が落ちる

つまり、家をつくる材料としての安定性がないため使えないのです。

だからこそ、木の家をつくるのであれば、
「乾燥された木材であること」が家づくりでは超・重要ポイント。


建材として使うには 含水率20%以下 にする必要があります。

乾燥方法は次の2つ。

▼ 人工乾燥

  • 2〜3週間で乾く
  • 含水率や強度を均一にしやすい
  • ただし高温で油分が抜け、香りが弱くなる
  • 乾燥工程で大量の燃料・電力を使用し、CO₂排出が多い

▼ 天然乾燥(自然乾燥)

  • 半年〜数年(2〜5年)かけてゆっくり乾く
  • 木本来の香り・色味・油分がしっかり残る
  • 乾燥工程の燃料・電力がほぼゼロ=CO₂排出ほぼゼロ
  • 室内材・外部材のどちらにも相性が良い

効率は人工乾燥のほうが上ですが、
木の魅力・室内環境・環境負荷 の視点では天然乾燥に軍配が上がります。

人工乾燥と天然乾燥でこれだけ違う「CO₂排出量」

一般的な木造住宅(30坪)では、10〜15m³の木材を使います。

人工乾燥で木材1m³を乾かすには
600〜1000kWh のエネルギーが必要と言われています。

つまり、家1軒分では……

6,000〜15,000kWhってどれくらい?

人工乾燥で家1軒分の木を乾かすエネルギーは、家庭の1〜3年分の電気使用量に匹敵します。

電気代にすると 約16〜40万円分
CO₂排出量にすると 約3〜7.5トン

これは、ガソリン車で地球を1/4〜半周走る量に相当。

乾燥の方法だけで、これほどの差が出るのです。

一方、天然乾燥は太陽と風だけで乾くため、乾燥工程のCO₂排出はほぼゼロ。
環境面での価値の大きさを実感しますね。

木口には 「25/6」 という印字。
これは、2025年の6月に製材したことを示しています。

こちらで3〜4年ほど天然乾燥させた状態 とのこと。

屋外で風雨にさらしながら、ただ置いておくだけ。
そうすることで木はゆっくりと水分を抜き、熟成されるように、少しずつグレーに風化していきます。

この自然のプロセスこそが、天然乾燥材ならではの深みや強さ、そして独特の風合いを生み出しているのだと感じました。

天然乾燥材のデメリットも正直に

天然乾燥材は魅力が多い一方で、もちろん弱点もあります。
ここをしっかり理解しておくことが、正しい木材選びにつながります。

● 乾燥に時間がかかる(半年〜5年)

天然乾燥は自然の力に任せるため、人工乾燥のように短期間で大量生産ができません。

● 含水率や強度が均一にならない

乾き方が一本一本違うため、人工乾燥材のように「規格通り」の安定性が出しにくい側面があります。

● 割れ・反りが出ることがある

ゆっくり乾燥する過程でどうしても個性が出てきます。
これも天然乾燥ならではの特徴です。

● 大量生産できず、希少で価格が上がりやすい

乾燥スペース、保管期間、人の手間が必要であり、効率重視の現代では珍しい存在です。

「木配り」という技術でデメリットを価値に変える

こうした天然乾燥材の弱点を補い、価値に変えているのが永田木材さんの「木配り」です。

木配りとは、一本ずつ木のクセ・強さ・節・色味を読み取り、図面を見ながら適材適所に配るという技術。

昔は、大工さんが手刻みで加工しながら自然と行っていた判断です。

しかし現代では、

  • 加工はプレカット工場
  • 材料発注は「このサイズを〇本ください」
    という流れが一般的で、木を見て材料を選び分ける機会が減っています。

(入政建築でも、手刻み加工は小さな小屋や増築の建物のみで、ほとんどがプレカットです。)

つまり今の時代、「図面を見て木を選別する」材木屋さんは本当に稀有な存在。

永田木材さんは、まず図面を読み、そこから最適な木材を選んで出荷してくれます。

ここだ!という場所に本当に良い木をあててくれる。

設計事務所や工務店にとって、これほど安心できる材木屋さんはありません。

天然乾燥材の価値が活きるのは、乾燥方法だけでなく、永田木材さんの姿勢と技術があってこそ。

まさに「木を見る職人」がいる製材所です。

建築材としての「最適な含水率」とは?

乾燥は木材の品質を決める最大の要素。
用途ごとに理想の含水率があります。

● 構造材(柱・梁・土台)

含水率15%以下(最大20%以下) が理想。
反り・割れを防ぎ、強度が安定し、カビ・シロアリのリスクも下がります。

● 内装材(天井・壁・造作材)

12〜15%程度 がちょうどいい。
室内環境と近いため、仕上がり後の寸法変化が少なくなります。

天然乾燥材はゆっくり乾くため、
木の油分・香り・自然な艶を残したままちょうどいい状態に近づくことが特徴です。

天然乾燥材が「特に良い」用途

◎ 外壁材・デッキ材

木の油分がしっかり残るため、

  • 腐りにくい
  • 水に強い
  • 耐久性が高い

雨や紫外線にさらされる外部材との相性は抜群です。

◎ 室内の仕上げ材

天然乾燥材は、

  • 木の純粋な香り
  • 自然な艶の美しさ
    がそのまま残ります。

さらに、木の持つ成分が生きているため、
空気質がよくなり、室内に心地よさを与えてくれる
という大きなメリットもあります。

わたしたち入政建築でも、杉の造作材はすべて天然乾燥材です。

人工乾燥材と天然乾燥材を「直に体感」して

セミナーでは、人工乾燥と天然乾燥の木を実際に比較させてもらいました。
これは本当に衝撃的な体験でした。

こちらが人工乾燥材

永田さんの説明がとてもわかりやすく、「人工乾燥材は木をサウナに入れるようなもの」とのこと。

急激に乾燥させるため、

  • スモーキーな匂いがする
  • 油分が飛び、乾燥しすぎた印象になる
  • 触れると「乾いた木」感が強い

たしかに、その通りの質感、匂いでした。

こちらが天然乾燥材

写真だと伝わりにくいのですが、色と艶が美しい のが分かりました。

  • しっとりした油分
  • 生きているような木肌
  • 純粋な木の香り

手に持って匂いをかぐと、すぐに違いがわかりました。

正直、写真では限界があります。これはもう 体感しないとわからない世界

どこかで「木の乾燥方法を比べる体験会」を開きたい!!と強く思いました。

地元の木を、地元でじっくり乾かす豊かさ

木の香り、あたたかみ、空気感。
天然乾燥でしか得られない心地よさが確かにある。

地元の木を、地元の気候でじっくり熟成させた木を家に使う。
その価値と豊かさを実感した、学び深い一日でした。

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