WORKS 施工実績

築100年石場建ての旧家リノベーション/浜松市浜名区気賀

「石場建て(いしばたて)」という伝統構法で建てられた築100年近い旧家のリノベーションです。
ご家族の主な生活は、旧家に隣接する増築部分で営まれていましたが、60代の施主さんにとって母屋には特別な思い入れがあり、「再びここを終の棲家とし、次の世代へも残していきたい」というご希望がありました。工事期間は9カ月。昔ながらの佇まいを守りつつ、暑さ・寒さの改善と耐震補強を中心に、住まい全体を整えました。

リベーション内容〉構造補強・断熱改修・外壁張替・屋根葺替え設備の入替え、新設土間部分の減築と間取り変更屋根葺替え など

必要な補修を行いながら、見た目の改変は最小限に抑えました。

リノベ後 外観

古いものを活かす工夫

先祖代々、家族の歴史が刻まれた空間を残すため、美しく古びた建具や和室の内壁・天井は可能な限り再利用しました。ぶかぶかしていた畳や傾きのあった床は、基礎から補強して水平を確保。既にリフォーム済みであった一部屋を残し、すべてがバリアフリーとなりました。

リノベ前 二間続きの和室

和室から居間へ

二間続きの和室のうち、手前の部屋は居間として使いやすいようフローリングに変更(キッチンや廊下も同素材)。スリッパ生活に合わせ、硬く傷に強いオーク材を採用しました。和にも合う、木目が美しい落ち着いた居間になりました。

リノベ後 手前をフローリング(居間)に変更
リノベ後 座敷から居間とキッチンを見る

新旧が融合するキッチン

リフォーム形跡があった洗面廻りに、キッチン機能もプラスしました。レトロな換気扇が印象的な空間に、古材をアクセントとして取り入れ、シンプルながら味わいある台所になりました。また、収納するものに合わせて大きな可動棚も計画しました(家電棚と収納棚)。オープン収納は使いやすさ優先です。

いりまさ定番の壁付けI型キッチン

また、廊下との仕切りには断熱性のあるポリカーボネート製の新しい建具を採用。古い建具と融合して個性的な空間を創り出します。新しい建具が経年で自然に飴色へと変わることで、既存の建具とも馴染んでいきます。

新しいポリカーボネートの建具と既存建具

小屋裏の再生

長らく使われていなかった小屋裏は、古民家らしい階段で上がる特別な空間。小屋裏は音漏れしにくい特徴から、ホームシアターや書斎に適するといわれています。
和モダンの落ち着いた空間となり、今後はゲストルームやギャラリーとしての活用を検討中です。

リノベ前 小屋裏
リノベ後 小屋裏への入口
リノベ後 小屋裏を和モダン空間へ

小屋裏へは、昔のままの階段で昇降します。

基礎の改修

古い「石場建て」の構造を活かしながら、耐震と防湿を目的に鉄筋コンクリートを打設し、基礎全体を補強しました。

「石場建て(いしばたて)」とは、古民家の建築に見られる古い技法で、基礎の石に柱を直接立てる工法のことで、建物そのものの重みで安定させます。現代のようにコンクリート基礎がない時代の、木造建築の基礎構法のひとつで耐用年数は数百年ともいわれています。

石破建て

今回、構造補強と防湿の目的で、鉄筋を入れコンクリートを全面に打ちました。

建物外観の改修と屋根軽量化

外壁は、ガルバリウム鋼鈑へ。屋根は重量のある日本瓦から軽量瓦「ルーガ」、下屋はガルバリウム鋼板へ変更。建物全体の軽量化により、地震の揺れや雨漏りリスクを大幅に軽減しています。

リノベ前 外観 かつて三角屋根の急勾配は、瓦屋根に必要な角度でした
リノベ後 外観

旧家リノベーションの意義

入政建築では、「人の記憶」や「風景の継承」こそサスティナブルだと考えています。古民家の風合いや建具一枚にも、先祖代々の暮らしや職人の手仕事が刻まれており、それを活かすことに大きな意味があります。

世代を超えて住み継がれてきた建物に命を吹き込み、未来へ思いをつなぐこと。便利さを備えつつ懐かしさや安らぎに包まれる日常こそ、旧家リノベーションの醍醐味ではないかと思います。

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