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PP Møblerから考えた、入政建築の歴史と、これから。

2025.12.04

先日、orioriギャラリーさんのご紹介で、デンマークの家具メーカー「PP Møbler」のイベントに行ってきました。
家具を見ながら、つくっているメーカーさんの話が聞ける機会はなかなかありません。

貴重な時間をいただき、感謝しています。

暮らしをつくろう。大切な人との時間を豊かに。

4代目の新野恵一(にいのけいいち)です。

(*タグで絞り込み→「4代目」を選択すれば、ブログがのぞけます。)

会場には、PP Møbler(以下PPモブラー)の現代表(3代目社長・CEO)、キャスパー・ホルスト・ペデルセンさんが来てくださり、PPモブラーの歴史や、大切にしていることを語ってくれました。
PPモブラーという社名は、創業者であるラース・ペダー&アイナー・ペダーセン兄弟の頭文字、PとPからきています。

「モブラー」はデンマーク語で「家具工房」という意味だそうで、非常にシンプルで素敵な名前です。


前に立っているのが、キャスパー・ホルスト・ペデルセンさん。
家業として家具づくりを続けてきた方で、穏やかで、誠実そうな人柄でした。

なんとご本人も家具職人だと知り、あとで調べて驚きました。

話を聞いていると、デンマークでも大量生産の波が押し寄せ、多くの家具メーカーが淘汰されていった時代があったそうです。

その中でPPモブラーは倒れずに残りました。理由は、効率でもマーケティングでもなく、「木と、手仕事を大切にしてきたから」でした。

PPモブラーは、世界的家具デザイナーのハンス・ウェグナーと共に歩み、いい家具をつくるために、ひたすら技術と向き合ってきた歴史があります。家具そのものの価値というより、そこに重なる時間と意思に触れた気がしました。

*目玉展示の、pp225 FlagHaylyardChair。
歴史や、思想をきくと余計にほしくなっちゃいますね。。。

会場は「the design gallery」。
大正後期に建てられた築約100年の木造建築を、現代の素敵な空間にリノベーションした場所でした。

和の要素を取り入れたその空間に、PPモブラーの家具が驚くほど自然に馴染んでいて、
「日本の空間にも、北欧の家具がこんなに合うんだ」と再認識しました。

最後に、写真をパシャリ。
*左:ご一緒した、ジェネビルの影山社長。真ん中:新野 右:キャスパー・ホルスト・ペデルセンさん

帰りに、織田コレクション ハンスウェグナー展にも寄ってきました。

家具好きな方はぜひお出かけください。すごい展示量で圧巻でした。

PPモブラーの製品がほしい!という方は、orioriギャラリーさんでご購入ください。


帰りながら、入政建築の歴史を思い出していました。

1925年(昭和元年)に国五郎が大工として創業し、地元の屋台や神社をつくり、地域を支えてきた時代がありました。

*赤が、初代国五郎、青が、2代目政治。

2代目・政治(まさじ)の時代は、弟子を育て、人材を輩出してきました。

建物以上のものを残してきた時代です。また、この時代に今の屋号が決まりました。
「政治に仕事が入る」→入政(いりまさ)。
このシンプルさも、PPモブラーの名付けとどこか似ています。

昭和の入政建築がつくっていた建物は、今の僕たちから見ると「なぜ?」と思うところが多いです。
僕が生まれた実家も、家相によって間取りを決めていたと聞きました。

南側にお風呂があり、リビングが北側に追いやられている。住環境としては決して良いとは言えない配置です。

でも、その時代にはそれが真剣な選択であり、家族の幸せを願って試行錯誤した結果だったのだと思います。

情報も十分ではない中で、「どうしたら良い家になるか」を懸命に考えた末に出てきた答えが、当時の入政建築の仕事でした。

その後、工務店として3代目(新野達治)が会社を立ち上げ、大工の徒弟制度から「心地よい暮らしが送れる設計」に力を注ぐ工務店へと進化しました。

そしてその変化は、まちにより良い風景をつくることにつながっています。

手を動かして建てることから、考えて設計することへ移ったことで、僕たちは以前よりも意識的に「どんな風景を残すか」を考える会社になりました。

今、入政建築がつくっている家は、昭和から確実に進歩しています。

温熱環境、光の取り入れ方、動線、素材、街との関係性。

僕たちは、個々の住環境を向上させることと同時に、まちの風景を良くすることを目指しています。

入政建築は間違いなくその方向へ成長していると、今は自信を持って言えます。

最近は、建築という言葉について考える機会が増えました。

建築というのは、新築の家だけを指す言葉ではありません。

リフォームも、リノベーションも、外構も、人の暮らしを取り巻く環境を整える仕事は、すべて建築だと思っています。

建築という言葉には、暮らしと風景をつくる喜びと、責任が宿っている。だから僕は「家づくり」という言葉より、「建築」という言葉が好きです。入政建築という屋号にしたのも、この想いがあったのかもしれません。だから、屋号は大切にしたい。

建築という行為そのもので、風景をつくりたい。

家は暮らしの器ですが、同時に、まちの景色を決める存在でもあります。

一棟の家のあり方が、その場所の空気を変える力を持っています。

ただ、個人にとって心地よいものが、まちにとって良い風景になるとは限らないということです。

だから建築は難しい。

住む人が快適であることは大切。でも、それだけを優先した結果、まちの風景が損なわれてしまうこともある。

だからぼくたちは、「内側の快適さ」だけを考えるのではなく、

外から見たときの「なんか、いいよね」って思える佇まいを意識したい。

それは正解のある世界ではありません。「これが正解!」と言える建築なんてありません。

だからこそ、考え続ける必要がある。住む人と、まちと、時間のことを、同時に。

その姿勢が、少しずつ、良い風景につながるのだと思っています。

家は、日常の場所です。
だから、明るくて風通しがよく、快適で、自分らしくいられる家であってほしい。

そして、そういう家は、まちの風景にとっても優しい存在であってほしい。

家づくりって、正解がわかりづらいし、不安が多いものだと思います。

  • 何を基準に選べばいいか
  • 自分に合った家はどんな家か
  • コストとのバランス
  • 将来のこと

考えることは多い。

でも、僕たちは「性能」や「価格」だけでなく、
暮らしの質と、風景の質を一緒に考えたいと思っています。

家は建てて終わりではありません。
暮らしながら育てていくもの、まちと共に変化していくものだと思います。

僕たちは、建てた後もずっと関わり続けられる関係でいたい。

リフォームも、外構も、暮らしの変化も、全部含めて、長く支えられる存在でありたい。

そして僕たちはこれからも、個々の暮らしと、まちの風景を同時に良くする建築を、誠実につくっていきたいと思っています。

もし、家づくりや暮らしのことで気になることや不安なことがあれば、お気軽にご相談ください。

一緒に考える時間は、ぼくたちにとっても楽しい時間になります。

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