先日、お引渡ししたOさんからインタビューをとる機会がありました。
リノベーションを決意した経緯を聞いていくと、大切なことが浮かび上がってきました。
暮らしをつくろう。大切な人との時間を豊かに。
4代目の新野恵一(にいのけいいち)です。
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新築も真剣に検討していた
今回Oさんご夫婦は、奥さんの実家をリノベーションして住むことを決めました。
しかし、最初からありきで進めていたわけではありません。
Oさんご夫婦は、新築も真剣に検討していたのです。
新築の最大の魅力は、
まっさらな状態から、暮らしに合った建物をつくれること。
敷地に合わせて、
- 配置
- 光と風の取り込み
- 動線と距離感
- 庭とのつながり
をゼロから設計できます。
さらに、性能面も現在の基準を満たすことができます。
これが、新築の大きな魅力です。
それでもリノベーションを選んだ理由
ではなぜ、Oさんご夫婦はリノベーションを選択したのでしょうか。
「奥さんの記憶の中にある家を継承したい」
この想いが、一番大きかったといいます。
今この場所は住宅街になっていますが、建った当時は、この家1軒だけだったそうです。
外灯も1つしかなく、夜はこわかった、と笑って話してくれました。
この町の風景をつくりはじめた住宅。


リノベ前の写真です。奥に見える素敵な庭も、ご両親が大切にしてきた庭。
壊すことは簡単です。
でも、守ることは、実は難しい選択なのかもしれません。
家族が集まりやすい場所にしたかった
さらに、
「家族が集まれる場所にしたかった」
という想いもありました。
家族にとっても想い出深い大切な家。
外観が以前のまま保たれていると、新築した家より、戻ってきたくなる。
そんな不思議な感覚が、たしかにあるような気がします。
リノベーションは「理想の実現」だけではない
リノベーションは、単に自分の理想を形にするための工事ではありません。
- まちの風景を守る
- 想い出をつなぐ
それは、自分たちという枠を超えて、みんなにとって最適な選択なのかもしれません。
そして、それは数字では測れない価値です。

リノベ後も、庭を眺めながら、暮らせる豊かなリビング。
性能面もきちんと向上させています
もちろん、性能面でもしっかり手を入れています。
ほとんどスケルトンの状態にもっていくことで、
断熱や耐震性を改善しました。
木造住宅は年月が経つと、金物がゆるむことがあります。
スケルトンにすることで、構造上重要な金物を最大限補強できます。
断熱性能を高めつつも、この家の魅力である風通しの良さはそのまま活かしています。
性能を上げても、環境の心地よさは損なわない。
これが今回のリノベーションの大きなポイントです。
建築屋の本音
建築の仕事をしていると、
「今の新築は、昔に比べて性能が格段に上がっている」
ことを痛感します。
だからこそ、大きな資金があるなら、新築をおすすめするのが一般的です。
しかし同時に思います。
そこにある建物を、そのまま守っていくという視点も忘れてはいけない。
壊してゼロにすることは簡単ですが、受け継ぎ、更新し、未来へつなぐことには、別の価値があります。
損得ではない価値
Oさんご夫婦が選んだリノベーションは、
「損得で選んだ判断」ばかりではありません。
- 思い出
- 風景
- 家族の時間
それらを大切にしたいという、価値の選択でした。
そしてそれは、新築よりも豊かな未来を生み出すことがあります。
ある人にとっては、新築よりリノベーションの方が価値がある。
それを改めて感じたプロジェクトでした。








