外観を残し、暮らしを一新する住まいづくり
Mさんの家のリフォーム工事が、ひとつの節目を迎えました。
外観は、ほとんど手を加えていませんが、内部はガラッと生まれ変わっています。
暮らしをつくろう。大切な人との時間を豊かに。
4代目の新野恵一(にいのけいいち)です。
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外観は、サッシの更新は行っていますが、屋根形状には手を加えていません。
そのため、建物全体の印象は、従来の姿を維持しています。
この家の大きな特徴は、平入の構成にあります。

寄棟屋根とすることで、正面・側面・背面のいずれから見ても平入に見える外観となっており、意匠上の統一が徹底されています。
ここまで平入の見え方に配慮した住宅は、多くありません。
建築当時の、外観構成にこだわりを感じます。

この外観を生かし、リビングには、木製サッシを納入。玄関引き戸も、木製に変更し、家の印象を柔らかくしています。
当初は、新築案についても検討を行いました。
しかし、「建物を残す」という判断に至り、リフォームを前提とした計画へ移行しています。
既存住宅を活かす場合、単なる修繕ではなく、どの要素を残し、どこに手を入れるかの判断が重要になります。
今回の計画では、外観と屋根形状は維持しつつ、内部は現在の生活に適合させることを主眼としました。

*BEFORE
水廻りの配置については、既存の位置関係を踏襲しています。
大きな移動を行わないことで、構造的な負担やコストを抑えながら、設備の更新と使い勝手の向上を図りました。
キッチンは、造作による製作としています。

*AFTER
既製品では対応しきれない寸法調整や、素材・サイズ・配置を個別に設計。
シンク上にあるオープン棚は、日常使いの食器を置くのに重宝します。
ミーレの大きな食洗器も設置され、使い勝手がよさそうです。
2階は、既存構造を活かした改修としました。

*BEFORE

*AFTER
AEP塗装+ルナファーザー(紙クロス)張りで、白を基調として、室内を明るくしています。
階段上がった部分は、空間をオープンにすることで、広がりのある空間になりました。
野ものの梁を現しとすることで、構造材そのものを意匠として取り込み、リフォームならではの意匠です。

構造的な安全性を確認したうえで、見せる部分と隠す部分を整理し、内部仕上げを決定しました。
南側の和室については、大きな改修は行っていません。
既存の使われ方を尊重し、必要最低限の調整にとどめています。


玄関の天井は、既存を生かしました。
玄関と廊下の間に扉を設置し、玄関を一度「緩衝空間」としています。
外と室内の間にワンクッションを設けることで、ドアの開閉時に起こる急激な温度変化を抑え、冷暖房の効率低下を防いでいます。
すべてを新しくするのではなく、機能更新が必要な部分と、継続使用が可能な部分を切り分けることが、リフォーム計画では重要になります。
今後は、駐車場から玄関までをつなぐ屋根工事を予定しています。

屋外動線の整備により、雨天時の利便性が向上し、日常動作のストレス軽減につながります。
外観全体とのバランスを確認しながら、既存建物との連続性を意識した計画としています。
今回の事例は、
外観を維持しながら、内部性能と暮らし方を更新するリフォームの一例です。
建て替えではなく、既存住宅を活かすことで、建物が持つ構成や意匠を継承しつつ、現代の生活に適合させることが可能になります。
今後も、この住まいが安定した状態で使い続けられるよう、引き続き工事を進めていきます。
Mさん、工事期間中しばらくご不便をおかけしますが、どうぞよろしくお願いいたします。
*Mさんの家の参考ブログはこちらかご覧ください。







