先日、ぼくの人生の師であり、建築設計の基礎を叩き込んでくださった秋山先生が急逝されました。
厳しくも優しいご指導のもと、ぼくは建築という世界、いや「工務店」で生きる土台を築くことができました。
(迷いもありましたが、これまでこのブログでたびたび秋山先生をご紹介してきたからこそ、この別れもきちんと書き残すべきだと思い書くことを、決めました。)
暮らしをつくろう。大切な人との時間を豊かに。
4代目の新野恵一(にいのけいいち)です。
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ぼくと秋山先生の本格的な関係は、モデルハウスの設計をお願いしたことから始まりました。
そのきっかけについて、秋山先生のブログにはこう記されています。
新野恵一君の入政建築モデルハウスの設計をお手伝いするようになったのは、彼からの依頼であった。
極く一般的なサポートの形からもう一歩……細部に渡って力を入れたのは、彼のブログの一文を読んだ所為だ。
それは、八ケ岳周辺で開催された「ゆるがないデザインを学ぶ」で、私の Be/412g22 を見たからなのだ。
「……そんなある日、秋山先生の設計した山梨の別荘を見る機会がありました。
衝撃でした。。。なんだ、この感覚。なんかおもちゃのように建築がなりたっている。(この表現はいいのか・・・)
こんなものづくりをしていきたい!そして、この楽しさをみなさんに伝えたい!強く思いました。」
どうも彼は、私の設計メソッドの違い、その底の部分に気がついたらしい……、それならば、私が設計過程で楽しんでいる方法をお教えしよう。彼もその過程を楽しんでもらいたいと思った。
それが可能かどうか分からないが……、この設計を通して設計メソッドを身に付けて欲しいと考えたのだ。
https://landship.sub.jp/stocktaking/archives/004096.html
この出会いが、ぼくの建築観を大きく変えました。
それまで私は「建築は、すべてを最初から完璧にしなければならない」という思い込みを持っていましたが、この別荘を目にして、その考えは崩壊。。。
建築にはもっと自由で、遊び心があってもいいのだと、強く感じたのです。
秋山先生は、とにかく絵がうまい。
一瞬で敷地をとらえ、その場でサッとスケッチを描き、形にしてしまう洞察力。
そして「これがいいんだ」と、迷わず決定する力と強い信念。
その姿は、弟子としてただ見とれるしかありませんでした。
ぼくがスケッチをまったく描けなかった頃、秋山設計道場で四角の書き方から教わりました。
次に、木の描き方、車の描き方、鳥観図の勘所……
「表現力は大切だ」と常に言われ、がむしゃらに練習を重ねた日々は、今でも鮮やかに思い出されます。
あるとき、ぼくは思い切って尋ねました。
「先生はどうしてそんなに絵が上手いんですか?僕も上手くなりたいです。」
すると先生は笑って、こう答えられました。
「君は、何年これをやってるの? 僕は50年もやってるよ。設計は技術。反復することで、上達するんだよ。反復すれば誰でも上手になる。」
この言葉は、今もぼくの糧になっています。

いま手がけている「aisuの家」も、秋山先生の教えを形にした商品です。
事あるごとに先生はぼくに自信を持たせ、背中を押してくださいました。
その「在り方」が、ぼくを成長させました。
自信をつけさせるって、すごいこと。
入政建築が今日あるのは、間違いなく先生のおかげです。
コスモネットのイギリス旅行で、ずっとご一緒させていただいたことも、最高の想い出です。
いってよかった。最後に、こんなに密な時間を過ごせて、ぼくは幸せ者ですね。

秋山先生から学んだことは、ぼくのすべて。
→https://landship.sub.jp/stocktaking/archives/000007.html(秋山先生の年表)
心よりご冥福をお祈りいたします。